【教えて!マメ先生④】子どものいたずらの“裏”にあるものとは?
日々、お子さんと一緒に過ごす中で、「あー何でこんないたずらするの?」「困らせないでー」と思う場面はありませんか?
これが毎日となると、終わりがないように感じられ、心が折れそうになったりもしますよね。
大人から見ると、「いたずら」=「困った行動」。そう思ってしまう気持ち、よーく分かります。
でも、少しだけ立ち止まって、なぜ子どもがこんな行動をとるのか、一緒に考えてみませんか?そこには成長に関わる大切な意味や理由もあるようです。
どんな視点で子どもを見たらよいのか、どのように対応すればよいのか、一生懸命子育てをするママパパの味方、マメ先生と一緒に考えていきましょう!
「いたずら」=「困った行動」!?
【マメ先生】
親にとって、子どものいたずらは、困ったもので、悩ませるものです。
しかも、今のうちに「しつけ」ておかないと、もっと「いたずら」で「わがまま」な子に育ってしまうのではないかと不安にもなりますよね。
でも、その多くは違うのです。
子どものことを研究している研究者や保育者などの専門家は、それを「意味ある行動」と捉えています。
さて、どういうことでしょうか?
「これ、どうなっているんだろう?」という知的好奇心の表れ
【マメ先生】
では、保護者の方から寄せられた具体的な事例から考えてみましょう。
●ティッシュ、引き出し、ゴミ箱のものなど、色々とにかく出す
せっかくきれいに収まっていたものを出されてしまうと、「もう!」って思いますよね。
でも、このような行動って、子どもにとっては知的好奇心の表れで、「これ、どうなってるんだろう?」という探索行動なのです。
そのため園などでは、出し入れ専用の物や場所を作り、心ゆくまで出し入れができるようにしておくことがあります。そうすると、子どもの好奇心は十分に満たされるのです。
ある時期、こういう経験が十分に満たされると、その後はもうしなくなるものです。
十分に自己発揮できる経験は、知的好奇心を満たし、満足感をもたらすなど、子どもの発達上も望ましいことです。
そう考えると、こうした「いたずら」はある程度、大事にしてあげたいものですね。
とはいえ、いつもティッシュを出されては困りますよね。そういう時に備えて、先ほども触れたように自由に出し入れしてもよいような箱を用意するなど、「これは好きに使ってOK」という代替案を考えてみるのはいかがでしょうか。
●人を叩いたり、髪の毛を引っ張ったりする
低年齢の時は、この行動も「こうしたらどうなるんだろう?どんな反応をするんだろう?」という好奇心からの行動です。
でも、痛い思いをしている人がいるわけですから、そちらに向かわないように他に興味を向けたりすることや、「おともだち、いやいや」などと親が困った顔を見せて真剣に伝えることも大切です。
何でも子どものやりたい通りではなく、「これは、ダメ」という姿勢も時には必要です。
子どもからの言葉にならないメッセージ
●遊び食べをする
遊び食べはいたずらというよりも、「もう食べたくない」というメッセージかもしれません。「もう食べないの?」と聞いてあげることも大切です。あるいは、食べさせてあげれば、食べるかもしれません。「もう、またいたずらして!」と思う前に、「ん?何か伝えたがっているのかな」と子どもの発しているメッセージは何かを探りましょう。
●壁、家具などに落書きをする
壁や家具などに落書きすると、親は大騒ぎをしますよね。
この場合、「色々なところに書いてみたい」という好奇心と「自分(あるいは自分の表現)を見てほしい」というメッセージと両方考えられますね。
そんな時は、「こっちに描いた方がいいな~」と他の物の代替案を示したり、子どもに寄り添い、一緒に描いてみるなど子どもにもうちょっと向き合ってあげる、なんていうのもよいかもしれません。
1~2歳児は自我が発達し、「自分はこうしたい」という意志が強く表れる時期なので、自分の思いが出せるということが何より大事です。
また、2歳後半~3歳児になっていくと、より運動能力が高まり行動も大きくなり、他者との関わりも増え、より活発になるため、いたずらや他者とのトラブルも増えることがあります。
どちらもこの時期らしい成長の姿ですが、親にとっては困ることも増えるものです。その姿をある程度受けとめつつ、意欲を他に向けることで自分の気持ちをコントロールできるようにしてあげたり、子どもの発する言葉にならないメッセージを探ったりしてみるとよいかもしれませんね。
子ども視点で考えると叱る以外の別の方法も見えてきますね。でも、時にきちんと伝えることが大切な場面もあります。
伝える時の疑問や悩みも保護者からあがってきています。マメ先生に聞いてみましょう。
「ダメ」などの否定的な言葉を使ってよいか悩む
必要に応じて使ってもOK! でもそればかりになったら、違う視点も持って
【マメ先生】
なぜそういう悩みが出てくるのかといえば、インターネット上に“ダメという言葉は良くない”というような情報などが色々書いてあるからだと思います。
私は、親に対して言葉を制限することはあまり効果的でないと思っています。「ダメ」という言葉は使ったって構わない。必要に応じて、しっかりとダメなことはダメと伝えることも大切です。
ただ、自分が「子どもに否定的な言葉ばかり使っているな」「怒ってばかりだな」と思ったら、「そうでない方法ってどうやったらできるかな」「どのように良い方向にもっていけるかな」と考えることが重要です。
例えば、先ほどの事例でもあったように「こっちやってみようかー」「これやってみる?」など他のことを提案してみることも一つですし、その子が自分の思いを受け止めてほしいのだとしたら、気持ちを受け止めてあげることの方がはるかに効果的であるということが多いです。
しかし、自身の身の危険に関わったり、人に危害を加えたりする場合は、ダメなことをしっかり伝えなければいけません。
このような場合、子どもの気持ちを受け止めることを優先するのではなく、すぐに止めましょう。突発的な行動に出る子もいるので、まず止めるということが大事です。
注意をおもしろがって、いたずらがさらにエスカレートする
笑ってずらす、見ないふりをしてずらすなど、「少しずらしてみる」
【マメ先生】
これは、その時の親の気持ちにもよると思うのですが、一つは開き直るのも手かなと思います。
「あー!ダメって言ったのに、またやっちゃったのね~。ママ困るわ~」「もうまいりました~」のような感じで笑って、流してしまう。子どもがしたことが深刻なことでなければ、お互い嫌な気持ちにならないことの方が大事かと思います。
親が怒るのをおもしろがるというのは、親を自分の方に向けようとしているメッセージでもあると思うので、親が笑ってくれたりすることで解決することもあるかと思います。
一番良くないのは、さらに腹を立ててしまうこと。怒りがエスカレートしてしまうこともあります。
そうは言っても、自分が笑える余裕がなければ、「ママ、もう知らない」などと伝え、しばらく見ないふりをして、自分の感情がイライラしない方にいく、ということも大事なのかなと思います。
繰り返されることに困ったり、イライラしたりしたら、それを真に受けすぎず、「少しずらしてみる」。
笑ってずらす、見ないふりをしてずらす、真っ向から受けないということでその場をしのぐのも一つだと思います。
今回の記事のポイント!
◎「いたずら」と捉えられる行動の背景には、知的好奇心や、その子の発するメッセージがある
◎子どもの気持ちを受け止めて代替案を示したり、一緒に付き合ったりすることで双方が嫌な気持ちにならずに済むことも
◎「ダメ」という言葉を使うことを悩まなくてもよい。ただ、否定的な言葉が多いと感じたら、違う視点でも考えてみて
◎親の反応をおもしろがってさらに繰り返す時は、「少しずらし」てみて
フレーベル館より
今回の記事はいかがでしたでしょうか。
「その場面でこうしたら、この子がそうしない子になる」というものはありません。子育てはそんなに単純ではありませんよね。
ここに挙げたのは、一例です。
あなたとあなたの大切なお子さんが嫌な気持ちにならないためには、どうしたらよいか、少しでも良い方に向かえるように、子どもの反応を見ながら見つけていくのが重要なことなのかもしれません。
次回もぜひご覧いただけたら嬉しいです!
私たちフレーベル館は創業以来、「子どもたちの健やかな育ち」を支えるため、様々な事業に取り組んでまいりました。「子どものことを想う」一員として、保護者の皆さんの悩みや不安、知りたいことなどに寄り添い、一緒に考えていきたいと思っています。
監修者プロフィール
大豆生田 啓友
玉川大学教育学部教授。専門は、乳幼児教育学・子育て支援。青山学院大学大学院教育学専攻終了後、青山学院大学幼稚園教諭などを経て現職。日本保育学会副会長。こども環境学会理事。NHK「すくすく子育て」をはじめ、テレビ出演や講演活動など幅広く活動中。多数の子育てに関する著書がある。