【教えて!マメ先生⑦】きょうだいに同じようにかかわれていない…。どうすればよい?
「下の子の世話に手がかかってしまい、平等に扱うことができなかった」「上の子中心の生活で下の子と、じっくり遊んであげられない」
上記は、きょうだいをもつ保護者の声の一部です。
上の子も下の子も、それぞれに親としてしっかり向き合いたいと思っているけれど、現実的にはなかなか難しく、もどかしさや申し訳ない気持ちを抱えてしまうこと、ありませんか?
今回は、「きょうだいへのかかわりの差」をテーマに、親はどのようなことを意識したらよいのか、具体的なかかわりはどのようにすればよいのか、そして子どもはどう感じているのか、などについて、触れていきます。
一生懸命子育てをする皆さんの味方、マメ先生と一緒に考えていきましょう!
きょうだいで親のかかわりに偏りがあると子どもに影響があるのではないかと不安…
「量」より「質」を意識してみよう
【マメ先生】
まず、「きょうだいで自分のかかわりに偏りがあって、不安」という視点をもてているということは、とても大事なことだと思います。
かかわりについてですが、かかわる時間の「量」の差を気にするより、「質」が重要ということをお伝えしたいと思います。
「質」とは、その子が親からすごく愛されているという実感を得られているか、そのような濃厚な時間がもてているか、ということです。
他のきょうだいよりかかわりが少ないからといって、愛情が少ないとか、成長に良くないということには、必ずしもならないということです。
ただし、もちろん子どもの立場で考えると、ある程度時間をとってもらう方が「大事にされた」という実感が伝わるということもあるでしょう。
では、どのようなことを意識していったらよいのでしょうか。
差が出てしまったなと思ったら、どんなことを意識したらよい?
その子とだけの時間を意識的にとってみよう
【マメ先生】
特によくあるのが、下の子に手がかかって、上の子にかかわる時間をなかなかとれない、ということかと思います。
実は上の子は、そういうことは仕方ないということが潜在的に分かっていたりします。また、自分で感情をコントロールしようとすることは、成長の一つになります。
しかし、そうは言っても本人としては辛いことも多いのです。だから、つい下の子に手を出しちゃったりすることもあるんですよね。
そこで、私がいつも提案しているのは、「その子とだけの時間を意識的にとること」。
下の子を誰かに預けて、上の子と2人で遊んだり、おでかけしたりしてみましょう(逆もまた然り)。
預けるのは、パートナーがいるのであればパートナーでもよいし、信頼できる誰かでもよいし、場合によっては一時保育だってよいと思いますよ。その子のためだけに、そこまでしたってよいと思います。
そういう風にして、「あなたのためだけに時間をしっかりとりますよ」ということが、自分はすごく大事にされている、と実感することにつながります。そう実感できることが子どもにとって、とても大事なことなのです。
上の子が下の子にあたってしまう。そんな時は?
気持ちを代弁したり、先の見通しを話したりすることで落ち着くことも
【マメ先生】
親のかかわりや意識が下の子にいきがちな場合、上の子が下の子を叩くなど、ついついあたってしまうことがあります。
しかし、親としては、それが意地悪で下の子に攻撃しているわけではなく、嫉妬心からくる行動であることを理解してあげることが大切です。
「叩いた」という行動だけに目を向け、「お兄ちゃん・お姉ちゃんなのに、どうして!」と過剰に叱るのではなく、その行動の裏にある「自分の方にも向いてほしい」「ちょっと時間とってほしいよ」というような子どもなりのメッセージに気づき、受け止めてほしいと思います。
では、具体的にどう受け止めればよいのでしょうか。
例えば、その子の気持ちを代弁してあげたり、先の見通しを話してあげたりすることで、落ち着くことがあります。
やさしく寄り添って、「そうだよね。一人で頑張っててくれたもんねー」「お兄ちゃん、ずっと頑張っててくれたもんね。それなのに全部赤ちゃんがこうやってもっていっちゃうから嫌だったんだよね」のように、できるだけその子がそうせざるを得なかった気持ちを言葉で代弁してあげること。
また、「ごめんねー。ママもうちょっと〇〇ちゃんと遊ぶ時間とるからねー。少しだけ待っててね」のように、もう少ししたらこうだからね、と先の見通しを話すこと。
一例ですが、こんな風に受け止めることで、子どもは自分の気持ちを分かってくれた、自分のことも考えてくれている、と感じ、安心することができるのではないでしょうか。
きょうだい喧嘩で上の子に我慢させがち。よくないこと?
代案を示し、我慢してもらった時はしっかり褒めてあげよう
【マメ先生】
例えば、取り合いの場面などであれば、「あ、じゃあそしたらお兄ちゃん、こういうのはどう?」というように、単に我慢させるのではなくて、代案を示すというのが一つかなと思います。
「お兄ちゃんにはもっといいもの、ママちょっと考えるね」など特別感を出してあげるのもよいでしょう。
自分も使いたいのに、下の子を優先させて、ということって、やっぱり上の子としては、おもしろくないし、やるせないものです。
我慢させるだけではなく、他の違う物をちゃんと出してあげるからね、と提案することはその子の気持ちの切り替えにもつながります。
また、きょうだいに譲り、他の物で満足してくれたことに対して「すごいねー。お兄ちゃんが譲ってくれて、〇〇ちゃん(下の子)もありがとうって思っていると思うよー」みたいなことも含めて、ちゃんと言葉で褒めてあげる、ちゃんと認めてあげるという行為が大事だと思います。
このように気持ちが切り替えられること(感情のコントロール)は、子どもの育ちを考えるうえで重要視されている非認知能力※の一つの要素でもあります。
でも、まあすぐにはなかなかできないので、代案があったり、親が自分のことを認めてくれたりすることで、切り替えがスムーズにできるようになっていくのかなと思います。
※非認知能力とは?
社会情動的スキルともいわれる。目標の達成・他者との協働・情動の制御に関わるようなスキル。
参考:池迫浩子、宮本晃司著、ベネッセ教育総合研究所訳「家庭、学校、地域社会における社会情動的スキルの育成:国際的エビデンスのまとめと日本の教育実践・研究に対する示唆 OECD」(2015年)
親も人間!「困ったなー。うまくいかないな」という姿を見せてもOK
【マメ先生】
「こうすればうまくいくのではないか」といった話をしてきましたけれど、実際にはなかなかうまくはいかないんですよね。
私も子どもを育てる親ですが、「困ったなー」という場面をいくつも経験しています。
でも、親も一緒になって困ることも必要なのだと思うんですよね。そんな風に親が困っている様子も含めて、子どもは理解していくことがあります。
親も人間なので、「うまくいかないなー」という気持ちを出してもよいし、そうすると意外と子どもがそれなりに解決策を示してくれるということもあったりするのです。
なかなか解決するのが難しいことが多い子育ての悩み。自分の気持ちも外に出して、一緒に考え、乗り越えていきましょう!
今回の記事のポイント!
◎きょうだいでかかわりのバランスが気になったら、「その子とだけの時間」を意識的にとってみて
◎かかわりの差によって、手が出てしまった子には、「気持ちを代弁することや、先の見通しを話すこと」を意識してみよう
◎きょうだい喧嘩でどちらかが我慢することが出てくる場合は、「代案を示すことや、子どもの気持ち・行動への称賛の言葉をしっかり伝えること」を大切に
◎親も人間!「困ったなー」という姿を子どもに見せてもよい
監修者プロフィール
大豆生田 啓友
玉川大学教育学部教授。専門は、乳幼児教育学・子育て支援。青山学院大学大学院教育学専攻終了後、青山学院大学幼稚園教諭などを経て現職。日本保育学会副会長。こども環境学会理事。NHK「すくすく子育て」をはじめ、テレビ出演や講演活動など幅広く活動中。多数の子育てに関する著書がある。